著者の片野歩氏は、20年以上に渡って、北欧中心に水産物買い付け業務に携わった経験を持ちます。
そしてその経験を元に、水産物のサステイナビリティを議論する国際会議「シーフードサミット」に参加し、日本人初の最優秀賞を政策提言部門で受賞しました。
この本では、漁業先進国と言われるノルウェーとの比較を中心に、日本の漁業の課題を記しています。
世界では17.4%増加の水揚げ量が、日本はマイナス13.7%??
他の国が漁をすることができない、いわゆる排他的経済水域の広さで、日本は世界6位。にもかかわらず、右肩上がりの漁業先進国とは異なり、衰退産業と言われる日本の漁業。
著者によれば、2025年までに世界全体では魚の水揚げ量が17.4%増加、各国が均衡もしくは増加とFAOが予想する中で、日本は13.7%のマイナスとされているというから驚きです。
さて、なぜ、こんなことになっているのでしょう?
獲りすぎを防ぐためには、、、
とにかく、獲りすぎが問題と著者は指摘します。
漁獲制限はあるものの、対象魚種もわずか7種。いくら獲っても設定値に届かないほどにゆるい値のため、実質的な制限になっておらず、意味をなしていないとのこと。
科学的根拠に基づいた資源管理を導入し、実のある規制が必要と著者は言います。
そうした「獲りすぎ」の一方で、日本では、獲れた魚の3割程度が船の上で捨てられていると言われます。
あまり知られていない魚、小さい魚などがとれてしまった場合に、港に持ち帰ってもお金にならないから、が理由とか。
著者によれば、ノルウェーやアイスランドでは、こうした魚の海上投棄が禁止され、EUでも2019年までに全面禁止されることになるそうです。
沿岸漁業者がないがしろにされている?
第2章では築地の仲卸業、東京海洋大学准教授、北海道焼尻島の漁師親子(実は、息子の高松亮輔さんとは焼尻でお目にかかったことがあります)、アメリカ人の水産物輸入業者の討論も掲載されています。
沿岸漁業者がないがしろにされている規制のあり方や、漁業の全体像を伝えないメディアの姿勢、世論形成に欠かせないNGOの役割(日本では活発とは言えないのが問題)、安い魚を求める消費者と魚食文化の崩壊、無謬性にこだわる官僚など、さまざまなことが話題にされ、読み応えがあります。
国民を漁協の出資者にして、配当は魚?
2015年のデータでは、日本にある996の漁協のうち7割が赤字経営と言います。
国民を漁協の出資者として、その配当は魚にすること。そうすることで国民が漁協のあり方を監視することにもなるからという著者のアイディアはおもしろいかもしれません。
あまり見たことがない魚でも食べてみること、小さい魚も獲れてしまった以上は活かすこと、また、安ければいいという考え方を反省し、持続可能な漁業のあり方を、私たち消費者もまた意識していく必要がありそうです。
近日予定のイベント、講座など
<シェアReadingの会>
「種」をテーマにシェアReadingの会を開催します。
(本を読んでくる必要がない読書会です)
2018年9月30日(日)10:00~12:00
季楽荘(横浜市緑区中山)
ファシリテーター サカイ優佳子
詳細はこちらをご覧ください。
<自家製乾物作り講座>
2018年9月4日(火)11:00~13:00
(*自家製乾物を使って作るランチつき)
品川区の会場にて
講師 DRYandPEACE
参加費 5,000円
詳細はお問い合わせください。
この講座に参加すると、自家製乾物作り講師養成講座への参加資格が得られます(9月中に開講決定しています。合わせてご参加ご希望の方は事前にお問合せください)
<秘密の気まぐれ料理教室>
2018年9月9日 (日)11:00~14:00
2018年9月27日(木)11:00~14:00
どちらも横浜市青葉区にて
講師 サカイ優佳子
詳細はこちらから
お気軽にお問合せください。
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