宇沢弘文先生の「算数」〜食や農に根ざした教育を〜

仙人のように長く伸ばしたヒゲがトレードマークだった東大名誉教授の宇沢弘文先生が亡くなられた。

在学中、経済学部長としてその姿をお見かけすることはあったが、学部も違い接点はなく、「風変わりな先生だな」くらいの印象しかなかった。

そんな宇沢先生の名前を卒業後に耳にしたのは、「食の探偵団」を立ち上げようといろいろ考えていた13年前のことだった。

「算数嫌いの子どもたちが多いのは、自分の生活の何に役に立つのかが見えないからだ。本来の学び、実学から遡って組み立て直すべきだ」

江戸時代、学校に通ってもいない農民たちが、役人にごまかされないようにという一念で、ピラミッド型に積まれた米俵の数をあっという間に暗算した、という例をひかれたという。

そして農、食に根ざした算数を教えるべきだと小学生用の算数の教科書を上梓したが、文部省(当時)の認定を通らなかった。


この話を聞いたことが、食育ワークショップ「食の探偵団」を進める上での軸の一つ「食から社会を見る」に繋がっている。とくに小学校高学年以上むけに不定期に開催している「食の探偵団の食育塾」は、食からさまざまな教科を学ぶ「授業」を、文科省の学習指導要領も読み込みつつ構成を考えてきた。

宇沢先生は雲の上の人のような気がしていて、「お目にかかってお話を伺いたい!」と思うことすらなく、この13年を暮らしてきた。今、思えば、先日ブログに書いた「枠」が私を縛っていた。それをとっぱらって宇沢先生にダメでもともと、お目にかかりたいと連絡をしてみればよかった、と今は思う。

 

かなわぬことになった今、食に根ざした学びという視点を大切にすることで、環境問題、社会問題に対しても、積極的な発言、行動をしてきた宇沢先生のご冥福を祈りたいと思う。