食糧危機に立ち向かう科学者たちの物語

「世界からバナナがなくなるまえに」
(Never Out of Season: How Having the Food We Want When We Want It Threatens Our Food Supply and Our Future)
は、私たちの食べものである植物を守るために、時には自らの命すら投げ打って研究してきた科学者たちの記録であると共に、目先の利益を優先してきたことが、今、ともすれば壊滅的な食糧危機にすぐにも陥らないとは限らない現状への警鐘の書でもある。

読み物としてもとてもおもしろく、時には涙しながら読み進めた。

ぜひ一人でも多くの人に読んでほしい。

世界からバナナがなくなる前に
世界からバナナがなくなる前に by ロブ・ダン

今の私たちの食卓は、多くの科学者たちの努力に支えられている

アイルランドのジャガイモの不作によって多数の餓死者が出たこと。


西アフリカの主食であるキャッサバが、危うく壊滅的打撃を受けそうになるところが、科学者の必死の努力により救われたこと。

 

ブラジルのカカオ産業が、ある病原菌が故意に持ち込まれたためにたった数年で壊滅し、輸入国に転落してしまった話。

 

ヒトラーによるレニングラード包囲戦の中、世界中から集めたコメやジャガイモなどの「種」の多様性を守るために研究所に立て篭り、食べものに囲まれながらも、種を未来に継承するために餓死の道を選んだ研究者たち。

 

スターリンの食物政策に反対し、投獄され拷問を受け死んでいった科学者の話。

 

「緑の革命」とそれが現代社会に残した影響。

 

自動車のフォードが経済界の論理で農業に参入し失敗した話。

 

世界中の病害虫の知識とそれに対抗する対策を世界中の農民がアクセスできるようなアプリを開発する人たち。

一人一人の「食べる」を束ねることで未来を変えていけるはず

この本を読んで、私たちが今、こうして普通に日々食事ができることが、どれだけたくさんの科学者たちの努力によって支えられてきたかに思いを馳せることになった。


と共に、ほぼ単一品種ばかりが栽培されていることへの強い恐怖を改めて
感じた。

私たちにできることは、グローバル企業が大きな土地で栽培する作物(実は広大な土地で栽培される植物は、害虫の標的になりやすい)よりも、地元で小さな畑で栽培されているような品種を食べること。私たちは、食べることによって種の多様性を守ることに貢献できるのである。

 

そう、一人一人の食べるを束ねることで、未来に働きかけることが、私たちにはできる。そのためには、テーブルの上にある食事の向こうにある世界に思いを馳せること、まずは知ろうとすることが大切。

改めて、そう思った。

 

この本、本当に多くの人にお勧めしたいのだけれど、いかんせん価格が3000円を超すのが本当に残念!