自分に出来ることは何か?「賞味期限のウソ」を読んで

食品ロス問題の専門家、井出留美さんの著書「賞味期限のウソ」を拝読。
井出さんと知り合ったのは5年ほど前だろうか。
Facebookなどを通じてその活躍を拝見しているだけではなく、時折ご一緒させていただいてもいる。そんな時にいつも感じるのが、多忙な中でも周りへの心配りが素晴らしいなあということ。そして実現したい未来を見据えてまっすぐに進んでいく気概、行動力。尊敬する女性の一人だ。

現段階における食品ロス問題の全体を俯瞰するのに最適の書

食品ロスの量がどの程度なのかという基本的なデータに加え、欧米の国々で進められている食品ロス削減の取り組みや特にここ数年で制定された法律(日本ではなかなかここまでは踏み込めないだろうなあというものが多々)を紹介。

また、日本の食品ロスを大量に生んでいる原因の一つである商習慣(1/3ルール)について記し、余っている食べものを困っている人たちに届ける「おてらおやつクラブ」や日本でも広まってきたフードバンクの活動についても触れている。
現段階における食品ロスという問題全体を俯瞰するのには最適の書と言えると思う。

私には何ができるのか?に落とし込むことが重要

井出さんらしいなと思うのは、「じゃあ、今日から私には何ができるのか?」ということを「今日からできること」として各パートごとに書くだけでなく、最後に「食品ロスを減らすための10か条」としてまとめていることだ。

食品ロスという問題は大きく、さまざまなヒト、コト、モノが関わっている。問題があるという事実は理解しても、解決への糸口を簡単には見つけられないことから思考停止に陥ってしまう人もおそらくは多い。

 

だが、結局のところ、私たち一人一人がほんの少しずつでいいから意識と行動を変えなくては未来は変わらない。裏返して言えば、すべての人がほんの少しだけ意識と行動を変えれば未来は大きく変わる可能性を持つ。

だが、「何を変えれば良いのか?」というところにまで落とし込めない人が意外に多いのも事実。そこを丁寧に言語化しているこの本を読むことで、すぐにでも始められることがたくさんあることに気づく読者は多いだろう。

批判すること、やらない理由を探すことは簡単だが、、

フードドライブ(余剰な食べものを集めて食べものに困っている人や施設に寄付する活動)で集まる食料の量は、食品ロスの総量に比べたら微々たるもので意味がないのでは?という声もある。

 

例えば本書で紹介されている福岡県の試み。コンビニで消費期限が迫った商品を経済的に困窮している家庭に届ける仕組みを作ったのだが、「子どもたちのプライドを傷つけるのでは?」とか「栄養バランスがいいと言えないものを届けていいのか?」と言った批判もあるという。


こうした問題があると知ってもらうキッカケになるだけでも意味があり、100%の理想論を唱えて何もしないより10%でもいいから行動に移し実践していった方が少しでも物事が前進するのではないでしょうか?という井出さんの言葉に大いに共感する。

だから乾物という考え方を広めたいと思っているのだ

私たちは食べ続けていかなくてはいけない。

 

 

土地面積あたりの収量を増やす研究や実践ができる人は少ないし、そもそもこれ以上増やすことができるのかはわからない。
今以上に森林伐採を進めるわけにはもういかないし、砂漠化も進んでいるから農地はこれ以上増えない。


食べ続けていくために私たち一人一人に出来ることは、今まで無駄にしていた食べものを無駄にしないために何ができるかを探り、行動に移すことしかないのだ。


食べものを無駄にしない乾物という知恵。現代のライフスタイルにあった活用法を提案し広めることで食品ロス削減につなげたい。井出さんの本を読みながら、改めて自分の活動の意義、軸、そしてこれからの展開を考えている。