日本は納豆後進国だった?〜「謎のアジア納豆」を読んで

2015年のクリスマスイブ、日本を発って上海に21時すぎに到着。翌朝8時の便で銅仁(トンレン)に飛び、クリスマスの午後には凍てつく2000m級の山頂に私は立っていた。
そして帰りのロープウェイで一緒になった地元のカップルに誘われるまま、彼らのオススメのレストランへ。共に鍋をつつき、ご馳走までしてもらった。お土産にと貴州名産のお酒までもたせてくれた。「遠来の客だから」と。

梵浄山の標高2318mに位置する蘑菇石
梵浄山の標高2318mに位置する蘑菇石

山に登る前には、タクシーの運転手さんオススメの鴨の脳みそに舌鼓をうち、我ながらどうにも濃すぎる24時間を過ごした翌日の銅仁のホテルの朝食にあったのがコレ!

銅仁のホテルの朝食で出会った「水豆豉」
銅仁のホテルの朝食で出会った「水豆豉」

どう見ても納豆。糸は引かないけれど、味も香り(ちょっと臭いは軽めだけど)も納豆!なのだ。
青唐辛子と赤唐辛子が加わった醤油味!香菜も少々。
不思議な気がした。こんなところでいきなり納豆に遭遇するとは!
聞いてみれば、この地域では普通に食べるらしい。
この土地になんだか妙に親近感を覚えた。
そして滞在中に、何度か食す機会があった。

だから「謎のアジア納豆」というタイトルを見た時に、すぐに図書館に予約を入れたのだった。
そして、やはり。
最後の方に貴州の鳳凰で納豆に出会うくだりがある!
水豆豉に出会ったその日、銅仁から鳳凰に移り、ここに私も数日滞在したのだ。
日本人には一人にすら会わなかった。
(残念ながら日本人お断りと書かれた看板をあちこちで見かけたのだが。これは著者もさらっと書いている)
美しい街だった。

中国貴州の鳳凰は美しい。苗族の文化が感じられる街だ。
中国貴州の鳳凰は美しい。苗(ミャオ)族の文化が感じられる街だ。

前置きが長くなったが、「謎のアジア納豆」は、辺境旅行家?でありノンフィクション作家の高野秀行さんの著だ。7月に夢中になって読んだ「謎の独立国家ソマリランド」と同一作者だったことに、手に取ってから気づく。

かつて住んでいたチェンマイで出会った煎餅のような納豆の記憶、ミャンマーのカチンで食べた納豆卵かけご飯!の思い出。十数年前のそんな体験からある日ふと納豆!にスイッチが入り、ここまでディープな探求の旅をしてしまうのには恐れ入る(元首狩族の村まで訪ねていく!)。

アジアを旅する中で日本の納豆の源流を求めて国内をも旅する。

高野さんが考察を重ね、疑問をそのままにせず突っ走るそのパワーには脱帽だ。
そして、ただご飯にかけるだけではない、納豆の変幻自在な様を発見していく。

稲藁で作る、は日本人の思い込みだった?

ところで。
「日本の納豆は稲藁にいる納豆菌で作る。一時日本でも流行りかけたインドネシアのテンペはバナナの葉の裏にいる菌で作る。」同じようなことを人は考えるのだなと私は思っていた。でも稲藁でないと作れないというのは日本人の思い込みにしか過ぎなかったことが、この本で明らかになっていく(遺伝子解析にかけるまでしてしまう!)。

高野さんにお会いする機会があったら伺いたい。

インドネシアのテンペは納豆なのか?違うのか?
香りがやはり相当違うと私には思えるのだけれど。

あとがきには韓国の納豆についても、これから探っていくとある。

続編が楽しみだ。納豆文化圏の考察、おもしろすぎる。

本を読んで、銅仁、鳳凰、そして実はその後、映画「アバター」のイメージの根源と言われる絶景の张家界(ジャンジアジエ)を訪れたその旅を振り返っていた。あのカップルとあった途端に意気投合してしまったのも、同じ納豆文化圏の糸で結ばれていたからなのだろうか?
张家界を登る時に励ましあって頑張ったグループの女性たちも皆とてもフレンドリーで、私のいい加減な中国語にも丁寧に付き合ってくれたのも、もしかしたら、、、。
もっと納豆について突っ込んで色々な人に聞いてみればよかった。


まあ、それはともかくとして、この本を読めば、とにかく納豆が食べたい!となることは言うまでもない。推理小説のようでもあり、ほぼ一気読みだった。オススメ!

余談:そのうちに高野さんにお会いしちゃう気がする、、、

余談だが、この本に、川のりと納豆を混ぜたものを食す場面が出てきて、「こんなところに苔!?」と驚いた記述があり、そのあとに、ラオスでも同様のものがあることを知った、とあった。

実はラオスのルアンパバーンを訪れた時、その「海苔」(カイペーンという)を産業として復活させ、海外に輸出する事業も手がけるドイツ人、オリバー・バンドマンの家に招かれて共に食事をしたことがある。彼が持つスタジオ兼ギャラリーで話しているうちに(オリバーは地元の紙すきも復活させ、海外からアーティストを呼んでそこに住んで制作する機会を作ってもいる。アーティストinレジデンスってわけ)、夫の幼馴染の彫刻家デビッド・スミッソンとオリバーがイタリアのピエトラサンタ在住の際の親友とわかったからだった。

国境を越えて、つながる人はつながってしまう不思議。
さて、次はどこを旅しよう?