料理を発想するマインドとは?

「地元の食材を使って何か名産品を作りたいんです」といったご相談を受けることがあります。「私が何がしかのレシピを作って提供するよりも、新たなレシピを考えることができるマインドを作るための研修の方が良いのではないですか?」といつもお答えしています。だって、そういう人が地元に増えれば、いくらだって無限にアイディアは湧いてくるはずだから。

レヴィ・ストロースの「料理の三角形」を嫌でも思い起こさせるタイトル。

玉村さんの著書は数冊読んでいましたが、料理の四面体は未読でした。

最終的にどんな料理も四面体で表すことができるという結論に至るまでのアレコレ。証明?するために挙げられた料理の記述が美味しそうなことこのうえないのです。
四面体として考えたことはなかったものの、新たなレシピを考えることを日常としている私にとっては、「そうそう!」と頷くことも多かったのです。

 10年以上前にある雑誌で提案したキンピラ七変幻
10年以上前にある雑誌で提案したキンピラ七変幻

2002年から各地で開催してきた食育ワークショップ「食の探偵団」のプログラムの一つに「変幻自在レシピ」があります。

 

例えば、フィリピン人の国民食アドボ。鶏肉(場合によっては豚肉)を醤油と酢とベイリーフとニンニクでマリネしてから煮て最後はてりつけるようにして仕上げます。フィリピン人に言わせれば酢はココナッツビネガーじゃなくちゃね、というのですが、日本ではそう手に入らないから米酢で代用してみます。


待てよ。酢は酸味を出すために使う。なら、他に酸味を加えるための調味料や食材があればそれで代用してみてはどうだろう?例えば、レモン。例えばヨーグルト。例えばタマリンド。そんな風に展開すれば全く違う料理が出来上がります。

 

基本のドレッシングの作り方があります。
油を変えてみたら?酢(酸味を加えるもの)を変えてみたら?ハーブを加えてみたら?
そんなことで、いくらでもバリエーションは生まれてしまうのです。
これをちょっとした軸を提供して、自分で考えてもらうのが「変幻自在レシピ」。

難しく考える必要はありません。多くの人は普段これを気にせずやっているんです。
味噌汁の具を変える、それと同じこと。

こういうことが自在にできるようになると「メニューがマンネリで」なんていう悩みは一切なくなるはずです。


世界を旅してあちこちで食べ歩いた記憶を元に、「もしもイタリア人だったらこの料理をどうアレンジするだろう?」「中国のこの食材は何で代用できるだろう?」などと考え、先入観をそぎ落として頭の中で料理を組み立てる。私は実はそうやってレシピを作っているのです。

数年前「乾椎茸をヨーグルトでもどすとふっくらしっとり仕上がる」という情報をネットで見つけました。乾物は水分を吸収して戻るのだからヨーグルトの水分であるホエーを吸ってもどすことは他の乾物でも可能なはず。そこから発展したのが乾物ヨーグルトレシピ。
そぎ落としていった時に何がキーになるのかを見極めればそこからの応用は簡単。

ガスパチョは多めに作って冷蔵庫に入れておくと暑い夏にぴったり。
ガスパチョは多めに作って冷蔵庫に入れておくと暑い夏にぴったり。

玉村さんのこの本を読んでいるうちに、人間が考えることは概ね同じようなことなのだという気がしてもきます。

先日、山形出身の友人が郷土料理の「ダシ」の話をしていた時に、「ダシはメキシコ料理のサルサやスペイン料理のガスパチョと同じ考え方ですね」といったら彼女は意外に感じたようでした。が、地元で取れる野菜を細かく刻んで合わせる(オリーブオイルを加えるとか、多少の違いはあるにせよ)という大きなくくりでは同じと私は感じています。そういう考え方、捉え方をするのがどうもクセになってしまっているのですかね。

もし、いつも料理がマンネリで、、という悩みをお持ちだったら、ぜひこの本を一読することをお勧めします。まあ、そういう悩みを持っていなくても食べることが好きな人ならとてもおもしろく読めることを受け合いますが。