「アノスミア」嗅覚を失う、ということ

久しぶりにとても面白い本に出会った。

 

「アノスミア」 嗅覚を失うこと。

名門ブラウン大学を卒業し、でもやはりシェフを目指そうと世界最高の料理学校の一つCIA(The Culinary Institute Of America)ヘの入学許可をとった後、実務経験が必要だからと有名なレストランに頼み込んで下働きに入ったモリー。

一流シェフを夢みて働いていたある日、交通事故で嗅覚を亡くしてしまう。

匂いのない世界とは?

匂いのない世界がどんなものなのか。

 

料理をどう感じるのか。

ガス漏れもわからなくて大丈夫のなか?

人との関わりは?

匂いがわからなくなった途端に、過去の記憶の一部も匂いの記憶とともに失われていく。

嗅覚研究の最前線をモリーが取材。これが面白い

食の仕事をするアノスミアの人に取材したり、嗅覚をはじめとする感覚を研究する人たちの話をききにいったり、香水で有名なグラース(フランス)に香りの授業を受けにいったり(それによって、匂いはするけれど具体的なモノや言葉に結びつけることができないという問題をクリアしようと試みる)するモリー。

彼女の語りによって、私たちは、現在の嗅覚の研究の最前線をわかりやすい言葉で説明されているようなもので、非常に興味深く読んだ。匂いと脳との関係も面白い。

モリーが不運な事故にあってから自分を取り戻すまでの物語としても、感覚についての研究の最前線をざっと知る読み物としても、十分に楽しめる一冊。