あれもダメ、こうじゃなきゃダメって考えて食べるのってかなりのストレスではないかな?

20年以上前の話だけれど。
長く日本に留学していたアメリカ人の友人Mが癌で亡くなった。
美人の奥様と結婚して2年。まだ30代前半だった。
彼は若い頃からずっと食べものに気をつかい、「カラダによくない」と言われるものは頑といってもよいほど口にしなかった。

中高年はタンパク質が不足しがちだからサプリをどうぞと言われたけれど

「**を食べると癌になりにくい」
「痛風の人は**を食べてはいけない」
「**はコレステロール値をあげるからやめたほうがいい」
そんな話がテレビや雑誌、ネットに毎日のように載る。

 

先日もあるところで「中年以上の日本人のほとんどが必要なタンパク質をとれていないし、十分にとろうとすればカロリー過多になるので、サプリで補うのがおすすめです」と言われた。

 

でもどうなんだろう?

サプリがない時代を生きてきた70代や80代でも、寝込むことなく1人で元気に暮らしている人はたくさんいる。

大好物の干し椎茸の煮物をやめたのに

亡父は、たくさんの持病を持っていた。

痛風、糖尿病、サルコイドーシス、生まれながらの心臓病、年に何度もの腎臓結石、コレステロールも高かった。お酒もほとんど飲まなかったし、好き嫌いもほとんどなかった。私と違って甘いものには目がなかったが、といってものべつまくなし食べるというわけでもなかった。

当時、痛風には椎茸は最悪、と言われ、大好物だった干し椎茸の煮物をやめた。
糖尿病になって、甘いものは一切断った。
コレステロールが高くなるからとイカやタコを食べるのをやめた。

父が亡くなってから、痛風にきのこはいいからせっせと食べろということになった。そもそも食べものが痛風に関係するパーセンテージは非常に低いからそれほど考えなくてもいいというのが最近の通説らしい。イカやタコは実は反対にコレステロールを下げると見解が変わった。

大好きな食べものを食べずに我慢していた父が哀れだ。

食品会社の売り方にも実は問題あり

「Aは人間のカラダに対してBの作用がある」ということが証明されているとする。
だとしてもAを「経口摂取」、つまり食べた場合に消化器官を通って吸収された時にも同じようにBの作用があるかは証明されていないというケース(実際これを証明するのは非常に困難だ)でも、「AにはBの作用がある、だからAが含まれるこの食品を食べるとBにいい」と思わせる(薬事法上そこはやんわり)売り方がとても多いのも気になる。
コラーゲンしかり、ギャバしかり。

「コラーゲンたっぷりでお肌プルプル〜」はプラシーボにすぎない。

頭で食べるより、カラダで食べたい

あんなに食べものを選んで食べていた友人Mが若くして癌で亡くなった。
アレコレ食べものの制限を続けてでも病気を治そうと努力していた父なのに、結局その努力は報われるどころか、反対だった。

そんな経験もあって、私はそういう情報にはあまり耳をかさないようにしている。食育の講演やワークショップでも栄養については触れない。栄養士ではないというのを表向きの理由にしているが、栄養に必要以上にこだわることは合理的ではないと考えているからだ。

 

元来、人間もまた動物。

自分のカラダの声に耳を澄ませれば、何を食べたいか応えてくれるのではないかと思っている。

 

重度のアトピーで食餌制限も半端ではない娘を育てた経験があるので、食べものに気を使わなければならないケースがあるのは理解している。

そういう特殊なケースでないならば、偏食せず、季節のものをふつうに万遍なく食べていればいいのではないだろうか。

あれもダメ、これもダメといつも考えていなければならないのは、実はかなりのストレス(というのは娘を育てる中で心底経験している)。いったい何のために「あれでなければ、こうでなければ」と思うのかを、周りに流されるのではなく、今一度合理的に考え整理してから、そのストレスを抱える決断をしても遅くはない、そう思う。

 

頭で食べるより、カラダで食べたい。

そんな感じ。