久松逹央氏「キレイゴトぬきの農業論」を読んで

世田谷ものづくり学校に拠点をおくスクーリングパッドの農業ビジネスデザイン学部。私はこの4期。

そんなご縁で声をかけていただき、久松逹央氏の出版記念会に。

「日本で一番、農薬にやさしい有機農家」

以前にも一度久松さんと場を同じくした機会があったのですが、その時はどんな方なのかもよく知らないままご挨拶。

その後、あるサイトで久松さんの「奇跡のりんごは時代劇だ!」で始まるシリーズ鼎談を「あ、あの時の!」と思いつつ読み進めるうちに、「ぜひお話を伺ってみたい」と思ったところでのお誘い。完璧なタイミングでした。

有機だから安全、は神話にすぎない

その著書「キレイゴトぬきの農業論」で、

有機だから安全
有機だから美味しい

有機だから環境にいい

 

は、神話にすぎないと言い切ります。

 

すべてにおいて同意できるかは別として、「なんとなく」のイメージで語るのではなく、彼の中で論理的に組み立てた言葉になっていることに好感。
(私自身、有機だから美味しいと思ったことは実は一度もありません。有機でもおいしいものとおいしくないものがあるし、慣行栽培のものはすべて有機に味で劣ると思ったこともありません。)

健康な野菜を追求したら、有機農業という「手段」が最適だっただけのこと

「健康な野菜」を作りたい。

あえて厳しい環境に晒すことによって健康でないものを淘汰させる「有機農業の選別機能」そして、作物を健康に育てるためには、畑の生き物を多様に保つのが近道。だから、有機農業という「手段」を選んだだけのこと。

 

このわかりやすさが、久松さんの特徴。


もともと農家ではなくビジネスの世界からの脱サラ組。

そのために、農業界で常識とされていることにも「え?違う方法でできないの?」と疑ってみる。痛快です。

 

「職人の、特殊な世界だと思われている農業に合理性を持ち込み、科学的・論理的なアプローチで栽培や経営を組み立てるのは、なかなか痛快な作業です」ご本人も「痛快」の言葉を使われています。

 

土浦に畑を持つことから3.11の影響も少なくなく、もうダメかも、と、畑で涙を流したこともあるといいます。どん底も経験した中からでてきた本音の言葉の数々。

 

ともすれば感情論、感覚論でばかり語られてきた農業界に、久松さんという論理的思考を得意とする語り部が現れたことは、これからの日本の農業への光、かもしれません。