ある団体の会員の方々を対象にした食育コーディネーター養成の講座を開催してきました。すでに15期。1期からずっと関わらせていただいています。
卒業生のうちの40名ほどがその団体に属する食育コーディネーターとして活躍中です。
自分が開きたい食育講座のプランをプレゼンしていただき、皆でディスカッション
午前中は、提出していただいた「こんな講座を開きたい」という資料をもとに16名の参加者のうちの4名に1週間の準備期間の後に、皆さんの前で10分のプレゼンをしていただきました。
「ここはある企業がもっている場。食育講座をこれから開催しようと思っているけれど誰にやってもらうか、候補者にプレゼンをしてもらう会をもうけた」という仮定。自分が開催したい食育講座の魅力や特徴を理解してもらうかを10分でいかに伝えるかが試されます。
4人のプレゼンそれぞれに対して、参加者の方々から提案をいただいたり、質問を受けたりの時間をとり、今後のブラッシュアップに役立てます。
プレゼンの機会がなかった皆さんには、提出されたレポートを読んで、もっとこのあたりを膨らませてみたら?とか、こういう点に注意したらきっともっとよくなると思うなどの意見を個別にお渡しさせていただきます。
後半はプチ食の探偵団を体験していただきます
2002年春に立ち上げた食の探偵団の基本的な方針は、自分の五感で食にむきあうこと。だからあえて栄養学などの「知識」は持ち込みません。
今回は、ウォーミングアップとして、アイスブレイキングとしても効果的な「においあてクイズ」でスタート。五感のうちの一つ、嗅覚で食べ物に迫ります。
次のプログラムは、「正体あてクイズ」。あらかじめ作っておいたスペシャルドリンクをお配りして、五感を駆使して味わっていただき、原材料名をあてていただきます。
そしてネタバレがあると困るのでお話できない「比べてみよう」というクイズ。
ディベートは、自明の理との思い込みを崩し、改めてきっちり考える契機にもなります
食関係の団体に参加している方々ということもあって、最後はディベートをしていただきました。
テーマは、「食材調達について、国産を限りなく100%に近づけるべきか、海外からの輸入を増やすべきか」。二つの立場に機械的にわけて、それぞれでまずは作戦会議。そしてディベート。
ディベートでは、「自明の理ではないはず」なことを理由としてあげてくるケースが実は少なくありません。たとえば、「限りなく国産100%に近づけるのがよい」という立場にある人がその理由として「自給率が上がるから」としてもそれは意味をなさないということを、なかなか理解していただけないことが多いのです。
「食料自給率をあげること」がよいというのははたして自明の理なのか?自給率とは何か、どう計算されているのか、自給率100%とはどういう状態かなどを改めて考えてみることが必要と思うのです。
また「伝統食が廃れていくのがもったいない」といった意見が国産派から出ましたが、輸入物で和の伝統食が作れないわけではないなどの反論もあり、実際のところ何が問題の核心なのかを互いの議論の中で明らかにしていくことができるのがディベートのよいところ。
「国産のものをできるだけ食べる方がいい」と感覚として感じている人が多かったのですが、それがなぜなのかをきっちり理論的に相手を論破できるほどに語れる人は少なく、逆にほんとうは国産を食べるべきと思っていながらも輸入も増やしていくべきという立場に配された人たちが、とても活発な意見を出していたのが印象的でした。
理想論だけではどうにもならない食の問題だからこそ、それぞれのメリットデメリットを洗い出して考え、論点を明らかにし、知っていたら参考になるのに知らない情報があることや、知識が曖昧なのはどこかなども確認し、さらにはそれを日々の自分たちの食卓と結びつけていくきっかけになるようにとの思いからディベートを取り入れました。
小学生対象ではたとえば「好きなものときらいなもの、どちらを先に食べる?」といったことでもディベートはできます。また、以前食品関連会社で行った際は「魚の天然ものと養殖、どちらを食べるのがいい?」といったテーマで開催したこともあります。
ここからどんな講座が生まれるのか、とても楽しみです
この15期のみなさんのこれからの活動、どんな講座が生まれてくるのか、この後、団体内での「見習い実習」が組まれ、さらにそれぞれの講座をブラッシュアップしてのデビューとなります。
食育のリーダーを育もうという講座はあってもこちらのように出口まで用意しているところは少なく、一歩を踏み出したいと思う人にとってはとても貴重な機会となっていると思います。
ただ、その後、転居などで神奈川県外に引越してしまうと組織の問題からリーダーとしての登録ができないとのことはとてももったいないと最近知って、とても残念に思っています。
さまざまな角度から食育に取り組む人たちが増えることが、これからの食と社会を変えていくと信じています。
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