「神饌ー神様の食事から“食の原点”を見つめる』を読む

「家庭画報」に連載されたものをまとめたというこの本、外部の目にふれることはまずなかった、全国18の神社の「神饌」(神へのお供えの食)を紹介している。

神道に馴染みがない私には初めて見る用語も多く、読み終わっても内容が頭にすっと入ったとは言いがたい。それだけ中身が濃い本でもある。

写真を見るだけでも、時間と手間と細心の注意を払い、技に裏打ちされたこんな食事が全国の神社で粛々と作られ続けているのだと驚く。

神饌は、たとえば伊勢神宮では1500年にわたって朝に夕に作られ続けてきた。作り手たちは、前の晩から身を清め、水面に姿が映らぬよう長柄杓で毎朝湧き水を汲み、食材すべてを自給自足で賄うという。

神様の食事として作られた糒(干し飯)や、普段は口にしない山芋の一種「野老」を備えることが飢饉のための蓄えにもなったといった記述もあり、また、「去年まであった簡単なものが、入手できない時代になってしまいました」という上賀茂神社の神饌を担当する藤木保誠さんの言葉もある。食のあり方、それをとりまく環境など、考えさせられる。

神饌の歴史、伝統を知らずに暮らしてきたのは、私ばかりではないと思う。是非、手にとってみてほしい本。